【「伽藍とバザール」研究シリーズ】005…既存のアイデアを出発点にする

こんにちは。大広の梅田です。

早速、具体的に「伽藍とバザール」から、「どのような『コーディネートが有効』か?」「その中でどのように生産消費者の『モチベーション』を向上させたのか?」というポイントを抽出していきたいと思います。

※尚、論文「伽藍とバザール」はリナックスの開発について書かれたものではありますが、著者のEric S. Raymondがメーラー関連のアプリケーションを開発した経験なども含まれています。両者の開発思想はほぼ同様(バザール方式)なので、ポイントを抽出する際は、どちらの(あるいは両方の)開発におけることなのか、には触れません。

 

■ポイント1

・まったく何もない状態から価値を生産することはできない。ただし、既存のアイデアを出発点にすることはできるし、楽(というかそれが望ましい)。

 

・・・このポイントの後半部は、ここを参考に抽出しました。

* 何を書けばいいかわかってるのがよいプログラマ。なにを書き直せば(そして使い回せば)いいかわかってるのが、すごいプログラマ。

 ――だからね。すごいプログラマを気取るつもりはないけど、でもそのまねくらいはしたい。すごいプログラマの大事な特徴の一つが、建設的な面倒くさがりってヤツなんだ。評価してもらえるのは結果であって、そのための努力じゃないってのがわかってるってこと。そして白紙から始めるよりは、よくできた部分解からはじめたほうがほぼ絶対に楽。

Eric S. Raymond 著 山形浩生 YAMAGATA Hiroo 「伽藍とバザール」 2 なにはともあれメールは通せ より)

・・・既にあるものを活用した方が楽、というのは当たり前のように思えますが、楽というだけではなく、そうすべきという理由がありそうです。これはまた別途取り上げたいと思います。

※詳しくは、「伽藍とバザール」の続編、「ノウアスフィアの開墾」を読んだときに触れていく予定。

また、ポイントの前半部は、ここを参考にしています。

バザール形式でテストしたりデバッグしたり改善したりはできるけれど、プロジェクトを最初からバザール式で始めるのはすごくむずかしいだろう。リーヌスはそんなことはしなかったし、ぼくもしなかった。あなたが生み出そうとしてる開発者コミュニティは、いじるために何か動いてテストできるものを必要としているんだ。

Eric S. Raymond 著 山形浩生 YAMAGATA Hiroo 「伽藍とバザール」 9 バザール方式の前提条件とは より)

・・・これは要は、「丸投げはできませんよ」ということだと考えています。あくまでも、プロサンプション(生産消費)活動は、生産活動ではなく、生産的な(自己満足のための)消費活動ですので、消費できるだけの対象(価値や体験など)が必要となります。

また、「モチベーション」関連のポイントも少し触れられていますね。即ち、「いじるために~必要としているんだ。」の部分です。生産消費者のモチベーションを維持・向上させるためには、(ユーザーが興味を持てる)出発点が必要だ、ということが言えるでしょう。

 

以上、まず今回はコーディネートしていく上での基本スタンス的なポイントを抽出しました。次回以降もこのような感じで、ポイントを抽出していきます。

カテゴリー: 研究仮説の発表/議論 — 梅田 10:37 AM  コメント (747)

プロサンプションとコミュニケーションの接点(具体事例のご紹介2)

こんにちは。大広の梅田です。

09年のスタートが少し遅くなってしまいましたが、本年もよろしくお願い申し上げます。

不景気と騒がれる昨今ですが、「プロサンプションという消費者の(無償の)生産的活動を、企業活動の一環として関係性を取り結ぶ(ことで結果的に収益性を改善させる)」研究を続けていくことで、この閉塞的な状況を打破する1つのアプローチとして提示していきたいと考えております。

 

さて、昨年の続きで、「プロサンプションとコミュニケーションの接点」の具体的な事例をもう1つ挙げます。

サントリーが昨年5月に実施したブロガーイベント「ハイボールナイト」です。

3月にサントリーが開催した「シングルモルトウイスキーセミナー(白州蒸溜所)のブロガーイベント」1コーナー「すごいハイボール」の話題が、参加したブロガーの間で盛り上がり、そこを起点にブロガーの間でハイボール熱が高まっていきました。

それを背景に、“クチコミ・マーケティングのパイオニア”ONEDARI BOYS(企業に対して自分たちのブログで話題にしたい商品のサンプル送付を自主的に“オネダリ”する集団)が、サントリーに「ハイボールオフ会」をオネダリして、サントリー側がそれを快諾した。

・・・という事例です。ここでまとめた3つの観点に沿ってポイントを書いてみます。

まず、「プロサンプション活動のコンテクスト」ですが、これはもう、申し分ないですよね。ブロガー(生産消費者)の間で「ハイボール」に関する話題が盛り上がっており、しかも「オフ会を主催してみませんか?」というオファーまでもらった、という状態であり、「ハイボールについてもっと知りたい!広めたい!」というコンテクストは、関係性を取り結ぶ上でとても良好だと言えます。

そして、「発散的なプロサンプション活動を集約するVisionですが、今回の事例は、企業にとってはコンテクスト自体がかなり企業寄りに集約されている状態でしたので、「(オファーに応えて)オフ会を実施する(ことでブロガーと関係性を取り結ぼうとする姿勢を示す)」ということに尽きます。

最後に、「プロサンプション活動の元となるネタ等の提供」ですが、これもその「オフ会開催」に尽きます。この記事のトラックバックから参加者の感想など読むと、申し分のない情報や体験が提供されたようです。特に、「名札のリボンの色を顔出しOK/NGで選んでもらう」など、細かい配慮/おもてなしもされています。また、そもそも企業の情報を発信する公式ブログ「サントリートピックス」があること自体が、情報/体験の提供の起点となっており、このような施策をやりやすい体制になっている、と言えます。

以上、ポイントを書いてみましたが、詰まるところ、「ブロガーからの要請を快諾してスピーディーに実行に移した」ということが、最も大切であり、ブロガー(生産消費者)と関係性を上手に取り結ぼうとする企業姿勢が見えます。

さて、次回ですが、「伽藍とバザール」研究シリーズに戻ります。「リナックスがつくられる過程でどのような『コーディネート』が為されたのか?」「その中でどのように生産消費者の『モチベーション』を向上させていたのか?」などのポイントを、上から順に読んでいきながら、抜粋していきたいと思います。

カテゴリー: プロサンプション事例紹介 — 梅田 6:43 PM  コメント (777)