プロサンプションとコミュニケーションの接点(具体事例のご紹介1)

こんにちは。大広の梅田です。

今回は、「プロサンプションとコミュニケーションの接点」のひとつの区切りとして具体的な事例を紹介しますが、前回書いた、

・プロサンプション活動の「コンテクスト」を意識する。

・発散的なプロサンプション活動を集約するVisionを明示する。

・プロサンプション活動の元となる「ネタ等」を提供する。

というポイントを押さえていきます。

※事例紹介は今回に限らず、今後も随時ご紹介していきたいと思います。

まず、pixiv上でいくつか実施されたゲーム企業とのタイアップ事例が顕著な事例だと思います。その中のひとつである、pixivとスクウェア・エニックスのタイアップ企画「パーティーキャッスル キャラクターデザインコンテスト2008を取り上げてみます。

このタイアップ企画の内容ですが、「仮想空間の住人として写真/動画の作成やゲームのプレイができる新しいオンラインサービスに実際に登場するキャラクターデザインをpixivユーザーから募集する」というものです。

この企画において、前提となっているpixivユーザーの「コンテクスト」は、「自分の好きな絵を書いて交流する場」というものです。

それに対してこの企画の「Vision」は、「『スクウェア・エニックス』の仮想空間『パーティーキャッスル』に住むキャラクターを自由に描いてほしい」というものが相当すると考えられます。

ここで注目すべきは、Visionがまずコンテクストに沿っている、ということです。その上で、「スクウェア・エニックス」という企業ブランドや「パーティーキャッスル」という語感が、発散的なプロサンプション活動をある程度集約させる方向付けとして機能しているのではないでしょうか。

そして、提供した「ネタ等」ですが、まずは、「美術や魔法が盛んな大国『アーティスキュール』」「科学の民主国家『サイエンティックヘブン』」「混沌と自然の学園国家『カオスフィール』」という国の設定がそれに当たります。この与えられた情報を元に、pixivユーザーはデザインのイメージを膨らませます。また何より、「募集したキャラクターから選ばれた大賞については、ほぼそのままのデザインで仮想空間内に実装する」という「名誉」がポイントです。あるいは「承認」と呼んでも良いかも知れません(※この「承認」という概念は、どこかで深掘りする予定です)。

「スクウェア・エニックス」というファンに愛されている企業から認められる、ということがプロサンプション活動を行うユーザーのモチベーションになっていることは、まず間違いないと思います。

この事例全体として、企業自体がコンテンツをつくっているわけではなく、「コーディネート」しているだけで、実際の具体的なコンテンツ(キャラクターデザイン)はユーザーがつくっています。まさに顕著な事例と言えるでしょう。

ただ、この事例はコミュニケーションの側面もありますが、サービス自体を一緒につくる、という側面が強いです(し、サービスそのものがプロサンプション的でもあります)。

ですので、もうひとつ顕著な事例、しかも目的がコミュニケーションに焦点が当たっているものを、次回にご紹介します。

カテゴリー: プロサンプション事例紹介 — 梅田 10:51 AM  コメント (723)

プロサンプションとコミュニケーションの接点(後半)

こんにちは。大広の梅田です。

前回からの続きで、今回は「コーディネート」について、具体的に書いてみたいと思います。

まず、「コーディネート」の必要性ですが、コントロールできない活発で発散的なプロサンプション活動を、あるひとつの(企業が望む)方向に、ある程度集約させるために必要な概念、と位置づけられます。

ここでポイントとなるのは、「プロサンプション活動による情報流通」と「プロサンプション活動発の消費者への情報提供」については、生産側(企業)はコントロール不可能である、ということです。

そこで、「プロサンプション活動に何らかの働きかけをしよう」というのが、「コーディネート」発想の原点です。

 

さて、「コーディネート」には、具体的に2つの要素が必要だと、(現状、仮説的に)考えています。

 

1つ目は、「Visionの明示」です。「Vision」は、企業がプロサンプション活動の一部を有益な形で集約させたい「方向」そのものです。

この「Visionの明示」は、「消費者」「生産消費者」の両方にすべきであり、企業が消費者に直接伝えるVision(≒従来の広告活動)と、生産消費者を通して伝わるVisionが同じ方向性を持つと、情報として強いものになると考えています。

逆に、この両者が別々の方向性を持ってしまって消費者に伝わると、情報として弱いものになってしまい、企業の意図しない結果となってしまうでしょう。

したがって、「Visionの明示」で必要になってくるのが、「プロサンプション活動の『コンテクスト』を意識してVisionを設定すること」です。

プロサンプション活動は自発的なものであるので、発散的ではあるものの、その根底には共通の「コンテクスト」があると考えられます。くだけて言うと、「どういう空気感で活動が行われているのか?」ということですね(「コンテクスト」については、前々回でも少し触れています)。

この「コンテクスト」を全く無視したVisionを設定しても、プロサンプション活動はコンテクストに沿って行われるので、その企業のVisionとは離れた方向で、生産消費者から消費者へと情報が伝わってしまいます。ですので、Visionを設定する際は、プロサンプション活動の「コンテクスト」を巧く取り入れる必要があります。

※ここで補足しておきたいことは、ある企業ブランド/商品ブランドのコミュニケーションを考える際、その領域に関連するプロサンプション活動の強弱により、どのようなコミュニケーション・アプローチを採るべきかが変わってくる、ということです。つまり、関連するプロサンプション活動がまだ弱い場合は、それを無視して従来通りの広告アプローチを採っても十分効果的です。例えば、特定のファン(生産消費者候補)が少なく全体的に関与が低い安価な生活消費財などが、そのケースに当てはまります。ただ、このケースにおいてもブランドのVisionを関与の高い領域(例えばエンタテインメントやニュースなど)に置き換えて語ることが出来る場合は、プロサンプションを意識した、所謂「クチコミマーケティング」をコミュニケーション施策に絡ませて、競合との差別化を図ることは可能です。

 

(話しを戻して、コーディネートに必要な要素の)2つ目は、「ネタ等の提供」です。プロサンプション活動の元となる情報などのネタを提供することで、直接的にはコントロールできなくても、ある程度は意図する(つまり、Visionに沿った)方向に活動を集約させる手段として有力だと考えています。

ここで、ネタ「等」と書いたのは、提供できるのは情報ネタに限らないからであり、例えばプロサンプション活動の「場」を提供することもできるでしょうし、「ポジション」つまり企業活動の一員として正式に迎え入れる「承認の証」を提供することもできるでしょう。(この「提供すべき要素」は研究次第で、まだまだ沢山出てくると想定しています)

 

以上が、「コーディネート」に必要な2つの要素であると考えています。上記の仮説を1枚のシートにまとめましたので、ご参照ください。prosumption081215

 

※このブログで度々ご紹介している研究概要をまとめた資料prosumption080819の最後に、その1枚を加えたものです。まとめ資料としてもご覧ください。またこの資料を商用活用されたい場合は「お問い合わせ」のメールアドレスにご一報ください。

 

さて、「伽藍とバザール」に話しを戻すと、当面の課題となっている「モチベーション仮説」の参考として研究するつもりだったのですが、

・「コーディネートを巧くすること(の一部)」≒「活動モチベーションを維持・向上させること」と考えられそう。

・「伽藍とバザール」は「コーディネートの良き参考事例」としても捉えられそう。

ということで、「伽藍とバザール」研究は、今後は「コーディネート」視点で見ていきたいと思います。

ちなみに次回は、「伽藍とバザール」を具体的に見ていく前に、「プロサンプションとコミュニケーションの接点」の最後(まとめ)として、実際の事例を紹介してみようと思います。

カテゴリー: 研究仮説の発表/議論 — 梅田 11:13 AM  コメント (8)

プロサンプションとコミュニケーションの接点(前半)

こんにちは。大広の梅田です。

本日から具体的に「伽藍とバザール」論文を読んでいきながら、ポイントを抜粋し分析・・・しようかと思っていたのですが、前回の記事

「ある企業/商品ブランドのコミュニケーションを実施する際、プロサンプションのコンテクストを理解した上で、そこから逸脱しないようなコーディネート機能を持つことができれば、生産消費者と企業が良い関係性を結べる可能性が高まる」

という、プロサンプションとコミュニケーションの接点について言及した箇所が、少し分かりづらかったかな?と思ったのと、

TAKMasato Taketomi)さん(プロフィールはこちら)のブログ「汐留通信」で、

主な研究テーマとなっている”生産消費”

ここに言及されている広告会社の公式ブログは貴重と思います。

(汐留通信「プロサンプション研究ブログ」より)

とのご紹介をいただいたので、今回は、「プロサンプションとコミュニケーションの接点」について、もう少し詳しく書いてみたいと思います。

 

まず、前回の記事のポイントは、

・プロサンプション活動には、「共通目的」が有るものと無いものがある。

・「共通目的」があるもの(で成功したもの)については、生産消費者が(何となく)共有している「コンテクスト」をベースとしながら、明確な「コーディネート機能」が存在する。

でした。今まで研究テーマとして扱ってきた事例を、「共通目的」の有無で分けると、

「共通目的:有」⇒「レゴ事例」gremz、「伽藍とバザール(リナックス)」

「共通目的:無」⇒「同人シリーズ(MAD、ワンフェス、コミケ)」

ということになります。ここで一歩踏み込んで考えてみたいことは、

「共通目的:有」の事例も、「共通目的の無いプロサンプション活動がベースとなっている」

ということです。(そして、この共通目的の無い活動を支えている共有意識/文化が、ポイントの2つ目に出てきた言葉「コンテクスト」に当たります)

例えば、「レゴ事例」「伽藍とバザール(リナックス)」のベースとなっているコンテクストは、「プログラマーの間で共有されている、より良い(面白い/便利な)プログラムをみんなで書いていこう(そのために情報交換を活発にしよう、プログラムは共有しよう)、という意識/文化」といったところでしょう。

また、gremz」のベースとなっているコンテクストは、「一般的なブロガーの間にある、誰かに何かを発信したい(そのための記事ネタが欲しい、結果として繋がりたい)、という意識/文化」ということ(+社会的な環境意識の高まり)だと思います。

※ちなみに、このコンテクストを支えているモチベーションの源泉を探り、モチベーション維持/向上のためにはどうすれば良いのか?を研究するのが、本シリーズ「伽藍とバザール」研究のメインの狙いです。

 

さて、ここで話しを整理すると、

「共通目的の無い(発散的な)プロサンプション活動について、そのコンテクストを良く理解した上で、うまくコーディネートすると、共通目的を達成することが出来る(=集約的なプロサンプション活動を得られる)」可能性に気が付きます。

これこそが、次世代のマーケティング・コミュニケーション(と呼ぶのが相応しいかどうかはまた別問題)のひとつの形、だと考えています。

 

従来の広告活動との対比で捉えてみましょう。

今までは、BCというスキームであり、この「⇒」で表現される「メディア」(テレビ等)に「クリエイティブ」(CM等)を乗せることで、C(消費者)は行動を起こしました。

しかし、現状はこうは中々いきません。

Cにも大きく分けて2つあり、1つがフォロワーと呼ばれる属性であり、もう1つが(イノベーター+)アーリーアダプターと呼ばれる属性です。

アーリーアダプターは、アクティブ・コンシューマー、もしくはプロシューマー(生産消費者)と呼ぶべき、まさにプロサンプション活動を担うユーザー(として有力な候補)です。時には社会的な風潮/世論(社会的コンテクスト)にまで影響を与えます。

一方、フォロワーは、従来通りに広告や世論から影響を受け、行動をします。

さて、以上のようなスキームを仮定すると、C(フォロワー)」は、「Bから発信される広告メッセージ」からも、「C(アーリーアダプター)が形成に寄与する世論」からも影響を受けることになります。すなわち、消費者を動かそうとする際、「C(アーリーアダプター/プロシューマー)の活動」≒「プロサンプション活動」は有力なファクタの1つということになります。

ここで先ほどの、「BC」というスキームに立ち戻ってみましょう。

従来は、「⇒」であるメディアにクリエイティブが乗っかることで、広告コミュニケーションが成立していました。

しかし、「BC(プロシューマー)」を考えた場合は、メディアにクリエイティブを乗っけるだけでは不十分です。なぜならCの先には、「CCC・・・・・・」という(発達したWeb環境に裏づけされた)多様なプロサンプション活動が存在しており、ここはコントロール不可能です。では何ができるのか?という話しになり、先ほどの「コーディネート」という概念に結びつきます。

 

つまり、従来の「メディア」の代わりに存在しているのは「コンテクスト」であり、従来の「クリエイティブ」に代わるのが(というより包括するのは)「コーディネート」である、という対比です。

「メディアにクリエイティブを乗せる」ように、「コンテクストに沿ってコーディネートする」ことで、(発散的な)プロサンプション活動を、集約的にし、ひとつの成果が得られるようにすることが、これからの新しいコミュニケーションのひとつの形だと考えています。

※「北風と太陽」で例えると、従来のやり方が「北風」だとすると、これからは「太陽」的アプローチもより考えていく必要がある、といったイメージでしょうか。

 

では、「コーディネート」とは何か?という事が気になる所ですが、それについては次回に書きたいと思います。

カテゴリー: 研究仮説の発表/議論 — 梅田 10:35 AM  コメント (1,194)

【「伽藍とバザール」研究シリーズ】004…プロサンプション活動の分類

こんにちは。大広の梅田です。

今回は、【同人シリーズ】と【「伽藍とバザール」研究シリーズ】におけるプロサンプション活動の類似点/相違点を整理しておきます。

そのキーワードになるのが、「(交通整理をする協調的な)コーディネータ」です。

【同人シリーズ】の各種事例における生産消費者の「作品創作活動」も、これから見ていく【「伽藍とバザール」研究シリーズ】の事例における生産消費者の「プログラミング活動」も、生産消費者の「自主的な活動」であり、「自分(たち)の満足のための活動」であるため、「(基本的には)金銭の授受が発生しない」ことは同じです。

さて、活動の「Vision(指針)」という観点で言えばどうでしょうか。

この研究ブログでは、たびたび「プロサンプション活動と企業が良い関係性を結ぶためには、バラバラな個々のプロサンプション活動をあるひとつの軸に向ける何らかのVisionが必要だ」ということを指摘してきました。

「レゴ事例」では、「コードの公開」「開発キットの提供」という良好な環境が整った場を用意し、製品の所謂“ハッキング”(というかもはや協働商品開発)を推奨した事がVisionとして機能しました。

また、gremzでは、ブログパーツがVisionとして機能している(つまり、環境を配慮するもバラバラで形にならないブログ上の発言を、キーワードを設定し話題の活性化を促し、植林という形で可視化させている)ことを指摘しました。

しかしながら、同人シリーズの各事例におけるVisionは具体的にはどのようなものが当てはまるでしょうか。

例えば、「『漫画やアニメに対する熱い情熱』を共有している空気感(コンテクスト)」がそれに相当すると考えられます。ただしこのような「コンテクスト」ではVisionとしては弱い、というか足りないのかな、ということを仮説として考えています。

もっと分かりやすく言えば、「共通目的の有無」です。つまり、「レゴ事例」「gremz」そして「伽藍とバザール(リナックス)」には、それぞれ「商品開発」「環境関連キーワードと植林」「プログラム開発」という共通目的(ゴール)がありますが、「同人シリーズ」の事例には、この共通目的がありません。各自のゴール(作品の創作)はありますが、その総体としてのゴールは明確ではありません。(強いて言えば、「漫画やアニメ文化を支え続けていくこと」でしょうか。)

また、もう一歩突っ込んで考えてみれば、「伽藍とバザール(リナックス)」は、「各人の『プログラムを良くしたい』『プログラムを書くことが好きだ』という想いを共有しているコンテクスト」があることがベースにあり、その個々人のプロサンプション活動を、リーナス・トーバルズが“(リナックスを完成させるある一定の方向の)Vision”をもってコーディネートしている、と理解できるのではないでしょうか。

以上の議論を仮説的にまとめてみますと、

・プロサンプション活動には、「共通目的」が有るものと無いものがある。

・「共通目的」があるもの(で成功したもの)については、生産消費者が(何となく)共有している「コンテクスト」をベースとしながら、明確な「コーディネート機能」が存在する。

と考えられるのではないでしょうか。この分析の意義として、「ある企業/商品ブランドのコミュニケーションを実施する際、プロサンプションのコンテクストを理解した上で、そこから逸脱しないようなコーディネート機能を持つことができれば、生産消費者と企業が良い関係性を結べる可能性が高まる」ということが言えそうです。

そして勿論、コーディネートしていく上で、「どのようなVisionが必要であり、その他にどのような要素が必要で、どう生産消費者のプロサンプション活動のモチベーションを維持・向上させていけば良いのか?」という議論に繋がっていきます。

・・・ということで、次回からはより具体的に「伽藍とバザール」論文を読んでいきたいと思います。

カテゴリー: 研究仮説の発表/議論 — 梅田 2:38 PM  コメント (2,510)