こんにちは。大広の梅田です。
同人シリーズも11回目の記事となりました。「角川グループとMADの関係と今後の可能性」「ワンフェスの仕組み」と続き、「コミケと出版業界の関係と今後の可能性」シリーズもとりあえずの内容を書き終え、いよいよ中間総括をしてみたいと思います。
その前に、「レゴ」シリーズで得た結論を復習しておきますと、
・「生産者」と「生産消費者」の関係性向上ステップは、「自発(対立)」⇒「容認」⇒「公認」⇒「発展的関係」。
・活発なプロサンプション(生産消費)活動があることが関係性向上の前提。
・「自発(対立)」⇒「容認」の段階で、生産者側のある程度のリスク回避、および「生産者」「生産消費者」双方のメリットが見えること。
・「生産消費者」は、「生産者」に熱狂的な活動を提供することで、自分たちの活動を支援してもらえる。
・「生産者」は、「生産消費者」に良好な活動環境を提供することで、「製品価値」「売上」が高まる。
つまり、
「『生産者』の事業ドメインと『生産消費者』の活動ドメインが(対「消費者」において)競合せず、シナジーを生むような構造を構築するために、積極的に『生産消費者』の活動を支援する」
ということでした。この場でもう少し分かりやすくポイントを補足しておくと、
・プロサンプション活動の環境が整った場を提供して活動を支援することで、活動の方向性をポジティブにすることが出来る。(レゴの場合は、ハッキングしてまでソースコードを知ろうとしたユーザーの暴走を止める代わりに、ソースコードを開示する場を提供した。)
・「容認」のフェーズで上記支援を明確に打ち出すことで、次のステップ「公認」へと進める。(公認するための準備期間。)
ということです。あるいは、
「単なる放置/黙認スタンスでは、「対立」や「(消極的)容認」といった問題を含むフェーズから抜け出せない。ユーザーのプロサンプション活動の「ために」何らかの情報や環境を生産者(企業側)から提供することで、はじめて「(積極的)容認」状態から「公認」へとステップを踏める。」
といった方が分かりやすいかも知れません。
以上のような経緯があり、この同人シリーズを書くにあたっては、次のことを念頭に置いていました。
・「自発(対立)」⇒「容認」⇒「公認」⇒「発展的関係」における「容認」⇒「公認」へステップアップする手掛かりは?(具体的にどのような支援?)
・そもそも、プロサンプション活動を行おうとするモチベーションはどのような状態?
この視点で、「角川グループとMADの関係」「ワンフェスの仕組み」を再度まとめ直してみると、
・プロサンプション活動の“支援”として、「独自の審査基準による認定」「当日版権システム」といった「ルール/ガイドライン」を整備しているが、個々の権利処理の膨大な事務処理が課題となっている。(また、その対価について、ワンフェスは「プロモーション効果」以上のメリットが見つかっていない。角川MADは「広告媒体として」等の付加価値を見つけようとテストを実施中。)
・モチベーションについては、「角川MADの独自審査基準」の場合、そのガイドラインに合わせて創作活動をしよう(≒ルール/ガイドラインを積極活用しよう)という機運はあまり見受けられない。「ワンフェスの当日版権システム」の場合は、そのシステムに則った創作活動が見受けられる。
といったところになります。
ここで、前者の「ユーザー支援としての環境整備(ルール/ガイドライン策定)」と後者の「ユーザーのモチベーション」は表裏一体の関係にあることに気付きます。つまり、「角川MAD」よりユーザーの創作活動に沿った、簡易な権利処理で済む「当日版権システム」の方が、ユーザーのモチベーションに寄与している(少なくともモチベーションを落としてはいない)と言えます。
また、「コミケと出版業界の関係と今後の可能性」を同様の視点でまとめ直してみると、
・支援としては、ほぼ黙認しているのみで、企業側からの具体的な環境整備は見受けられない。
(※各企業(各出版社/各タイトル)ごとでスタンスは異なる。一部からは積極支援の動きは存在。ただし業界全体的な取り組みはないと思われる。)
・ユーザーのモチベーションは非常に高いが、創作/活動許容範囲の判断に悩んでおり、一部には不幸にも裁判になってしまった事例も少なくない。
となります。
また「黙認スタンス」の結果として、
「(消極的)容認のフェーズが長期に渡ったため、生産消費者の「生産」と「消費」へ分裂し、アマとプロの境目が曖昧になっている。」
という問題を抱えています。
以上を俯瞰して、「同人シリーズ」の中間総括を書いてみます。
・生産側(企業)として、各種問題を含む「(消極的)容認」フェーズを抜け出すためには、プロサンプション(生産消費)活動の支援となるような環境整備(ルール/ガイドラインの策定と普及)をする必要がある。(※黙認が長期化すると生産消費者の内部分裂が起こり、プロ/アマの境界が曖昧になる)
・ルール/ガイドラインは、あくまで「ユーザーが抱えている問題を解決する」ために策定されるべき。(※そこがないルール/ガイドラインはユーザーの活動モチベーションを落とすか、あるいは無視される)
・ルール/ガイドラインの遂行において、膨大な事務処理が発生すると企業側の負担となり、システム自体が危うくなるので、なるべく簡素に運営できる必要がある。
以上から、具体的なルール/ガイドラインの策定アプローチとして、
・Web上で運営できるシステムにする。
・ユーザーの自己申告を基本とする。
・ユーザーが日頃、自分の作品の扱いについて悩んでいる点を整備する。
の3点がポイントなのではないでしょうか?具体的には、「企業側が書類を審査する」という性質のものではなく、「一定のルール/ガイドラインの下、Web上で自動構築される作品データベースを、企業側とユーザーが一緒になってつくる」という性質のものだと考えます。
つまりは、一言で言ってしまえば、「クリエイティブ・コモンズ」的な考えを支持するものです。ただし、ポイントとして、特に3点目が重要だと考えますので、各ジャンル毎にコモンズが立つのは良い傾向だと考えています。それはつまり、各ジャンル毎のユーザーの活動に合わせて制定している、ということを表していると思いますので。
したがって、現状、「クリエイティブ・コモンズ」「ピアプロのライセンス条件」「ニコニ・コモンズ」「pixivコモンズ」と、ルール/ガイドラインが乱立していますが、それぞれユーザーに使ってもらえて場を活性化し、更なるクリエイティブを生むシステムに進化していけば良いのではないでしょうか。
(コモンズ間の相互乗り入れはその先の課題。)
以上を「同人シリーズ」の中間総括としたいと思います。ただし、今回、掘り切れなかったポイントに、「どのような要素がプロサンプション活動(同人創作活動)を行うモチベーションに寄与するのか?」があります。ここは、「同人シリーズ」に対して、コメント、トラックバック、はてなブックマークでのコメントなどでいただいた各種ご意見を考える上で最優先課題だと認識しています。
つまりは、「創作モチベーションを落とさず、むしろ上げるようなルール/ガイドラインの整備」であり、上記の中間総括から議論を深めていくことに他なりません。
次回は、今後のこのブログの執筆予定を書いてみます。お楽しみに!