こんにちは。大広の梅田です。
さて今回は、前回までの「1. 権利問題」、「2. プロ/アマ問題」をまとめ、考察してみたいと思います。
「1. 権利問題」
・先に見てきた「角川グループとMADの関係」や「ワンフェスの仕組み」といった「権利者と二次創作者の関係」において認められる課題(「プロモーション効果」と「権利処理の手間」のバランスをどう考えるか?)は、同様にある。
・「権利者と二次創作者の関係性の近さと曖昧さ」が、「権利者側の対応がバラバラ」で「明確なルールがない状態」を生んでいる。
「2. プロ/アマ問題」
既存市場が、ヒットマンガへの過多な依存等の要因でコンテンツの質が低下、その他の理由も加わり、長期的(構造的)に減少傾向である一方で、アマチュア側の活動が存在感を増している。
プロ(企業)とアマ(消費者)双方の生産活動の境目が崩壊し、カネや創作物が必ずしも企業側に提供されない状態ではあるが、生産(消費者)の旺盛な活動に依存している側面もある。
そのため、大きな収益源としては稀に出るヒットマンガに頼らざるを得なく、悪循環に陥っている。
ここで、ポイントがあります。
以上、これらの問題を俯瞰すると、問題の根本には、
「プロサンプション(生産消費)活動における、生産と消費の分裂」があることが理解できるかと思います。
この視点は、従来から「コミックマーケットが抱える問題」として指摘されており、
近年、コミックマーケット特有の事情やルール・マナーをあまり理解しないまま来場する参加者(いわゆる「お客様感覚の参加者」)が増加傾向である。
コミックマーケットでは、全ての参加者は対等の立場であるとされる。このため一般参加者であってもルールとマナー、諸注意事項を理解して参加する必要があり、毎回発行されるカタログ上で呼びかけられる。しかしながらインターネット上のコミュニティが発達し、またコミックマーケット自体も社会認知度が高まるにつれ、雑誌やインターネット上の掲示板等の情報だけを頼りに来場する参加者が増えてきており、他の参加者やスタッフ等とのトラブルに発展するようになってきた。
(Wikipedia「コミックマーケットが抱える問題」より)
と、「参加者の客化」、つまり「生産消費者の消費者化」が問題視されています。その一方で「プロ同人」といった「生産消費者の生産者化」も現象として認められます。
以上をビジネス視点で(企業側から)捉えると、
「プロサンプション活動について、企業として理解した上でのビジネス開発に本格的に取り組んで来なかった(取り組める環境やテクノロジーが無かった)こと」
と言い換えられるかも知れません。つまり、
「1. 権利問題」で言えば、「容認」フェーズで止まったまま次のステップへと進まなかった(進めなかった)点が課題であり、
「2. プロ/アマ問題」で言えば、「プロサンプション(生産消費)活動の分裂」を止めなかった(止められなかった)点が課題、と言い換えられます。
以上を踏まえて、解決策の方向を考察してみると、
・全体としては、「生産」側と「生産消費」側を明確に分けるスタンスが必要。
・「1. 権利問題」で言えば、二次創作を「公認」フェーズへと進める必要。
・「2. プロ/アマ問題」で言えば、アマチュアとしての「生産消費者」の活動を認めつつも、プロである「生産者」との線引きは明確にする必要。
以上3点が肝要だと考えられ、そこから提案できる解決アプローチ案として、
「クリエーター・エージェンシーとしての役割を果たすWeb上のコミック・オープンソース・マーケット」
が挙げられます。
「コミック・オープンソース・マーケット」案をもう少し具体的に説明してみます。
まず、「1. 権利問題」において、二次創作を「公認フェーズ」へと進めるべく、「生産」側である「出版社」は、このオープンソースを活用する/しないを、各案件ごとに決め、宣言します。権利処理のスタンスとしては、この宣言のみで、後はWeb上でオープンに二次創作が進んでいくので、アナログ上でクローズドに行われる膨大な権利処理の手間よりは遥かに簡素化されるはずです。
次に、「2. プロ/アマ問題」において、プロとアマの境界を(定義上)明確にするために、この「コミック・オープンソース・マーケット」を、(擬似的な)「クリエーター・エージェンシー」としての役割を持たせます。
つまり、アマチュアである「生産消費者」の自由な活動を認めつつ、生産消費者の二次創作物が一定の利益を生んだ場合、出版社側は一定の利益シェアを受け取ります。それにより、生産消費者は良好な創作環境を、出版社側は一定の利益を、それぞれ獲得することが出来ます。
ここでのポイントは、二次創作物の利益の幾らかを企業である出版社に戻すことで(=アマ側で発生した利益の一部をプロ側に戻すことで)、プロ/アマの線引きを意識させていることです。
※アマ側が得た利益は、「プロ側のプロモーション費用(ファンサービス+広告効果)」と捉えることで、理屈としては収まります。
※今までは、アマ側の利益が過剰な場合に裁判等にもつれるケースが幾つも発生しています。この「過剰」分を裁判ではなく事前ルールとしてプロ側へシェアすることで、線引きします。
さて、ここからが本案の一番のポイントなのですが、この(擬似的な)「クリエーター・エージェンシー」は単なる利益シェアのための代理活動(の場として)だけではなく、エージェンシー業務としての、いわば「クリエーター・プロデュース」(のきっかけの場)も担わせます。
もう少し正確に言えば、この「コミック・オープンソース・マーケット」上でのアマチュアの活躍レベル(≒二次創作物の販売レベル)を目安に、出版社側(やフリーのプロデューサー)がアマチュア作家を正式なプロとしてスカウトすることができ、またアマチュア作家の側も複数のスカウトから自分のプロデューサーを選ぶことができる、ということです。
※このポイントについては、「たけくまメモ」の「マンガ界崩壊を止めるためには」シリーズがヒントになっております。
「版元と作家の信頼関係」が、現在、音を立てて崩れ去ろうとしているのだ
(たけくまメモ「マンガ界崩壊を止めるためには(1)」より)
●すでにモラルや精神論で解決する問題ではない
(中略)
現状のマンガ界ビジネスのありようを「モーレツ社員前提のフレームワーク」
(たけくまメモ「マンガ界崩壊を止めるためには(2)」より)
これまで個人の編集にまかされていた新連載の企画も、編集部内に常時「新連載開発班」を設けて、前の担当連載が終わった編集者はここに配属されて新連載の企画開発に「専念」する。そこまでの余裕が編集部にない場合、外部の「マンガ・プロデューサー」がマンガ家や編集部と協力してこの任にあたる。
(たけくまメモ「マンガ界崩壊を止めるためには(6)」より)
「マンガ・プロデューサーは才能の発掘と育成・供給を手がける」。
(たけくまメモ「マンガ界崩壊を止めるためには(補足)」より)
以上、まとめると、
・権利上クリアでオープンソースな「コミック・オープンソース・マーケット」をWeb上に設ける。
・その場は、「作品のマーケット」としては勿論、「作家のマーケット」としても機能させる。
という案になります。如何でしょうか?
もし現実のものになれば、従来の「プロ/アマ」のイメージとは違う「プロ/アマ」の線引きにはなると思いますが、少なくとも現状の混沌とした状況からは脱却でき、「生産」側の出版社、「生産消費」側の同人の線引きが明確になり、Win-Winの関係性を築け、出版業界の活性化に繋がると思います。
※「従来のイメージとは違う」と書いたのは、このようなオープンソースなマーケットが出現すると、出版業界のビジネスモデルも変化してくることが想定されるからです。つまり、「一見すると同人活動のように見えるが、スカウトを通じて出版社側と繋がっているプロ作家」(≠プロ同人)が登場し、出版社ビジネスとしても従来の「週刊/月刊誌⇒単行本」に収まらないモデルが出てくる可能性があるからです。それは上記でご紹介した「たけくまメモ」の「マンガ界崩壊を止めるためには」シリーズの一連の指摘に合致します。
さて、現状を見渡せば、この「オープンソース」のルールとして有力なのは、「クリエイティブ・コモンズ」か「ニコニ・コモンズ」なのではないでしょうか?
ちなみに、この「コミケと出版業界の関係と今後の可能性」シリーズを書く前に、(ニコニ・コモンズと連動し、コミケとの親和性が高い)pixivを、
・・・pixivは、(偶然にも)これから書く予定の「コミケと出版業界の関係と今後の可能性」における課題を解決するアプローチの1つになるかも知れませんね。
(プロサンプション研究ブログ「【トピックス】…pixivの可能性を感じるポイント3つ」より)
とご紹介したのは、以上のような論旨を想定していたからでもあります。
※ルール、ガイドラインとしてのコモンズ研究については、また別に取り上げられれば、と思いますので、ここでは深くは触れません。
・・・以上で、「コミケと出版業界の関係と今後の可能性」シリーズをいったん終わります。次回は、「同人シリーズ」全体の総括をしてみたいと思います。