『YouTube時代の大統領選挙』出版記念セミナーに参加しました…さらに加速するプロサンプション活動

こんにちは。大広の梅田です。

前回は、「プロサンプション活動を起こす文化/土壌について」考察し、「『過剰財(生存に必要だが不足することがない財)』を贈与し合いコミュニティ内の評判を獲得する『評判ゲーム』が、プロサンプション活動のモチベーションの源泉となっている」という主旨を書きました。

今回は、この「モチベーション」について、もう少し詳しい構造を見ていこうと思ったのですが、ちょうど先日参加したセミナーがこの「モチベーション」と関連する話題を提供してくれたので、今回はこのセミナーの紹介をして、次回にその内容も絡めながら「モチベーション」の構造を考察していきます。

 

さて、そのセミナーですが、「第3回 JaMMedia Session in Tokyo 『オバマ現象』後のアメリカにおけるコミュニケーションの変化。」というもので、大柴ひさみさんの新しい著書『YouTube時代の大統領選挙-米国在住マーケターが見た、700日のオバマキャンペーン・ドキュメント』(東急エージェンシー出版部)の出版を記念したものです。

セミナーは東急エージェンシーさんの会議室で行われたのですが、ドーナツとコーヒーがサーヴされるなど、カジュアルでリラックスした雰囲気で、講演後の質疑応答ディスカッションが活発になるような配慮がされていて、気持ちが良かったです。

大柴さんの講演は、話しの合間に著書内で取り上げているYouTubeの映像をタイミング良く挟みながらテンポ良く進み、あっと言う間に時間が過ぎました。短く感じたのは、映像を挟んで飽きさせなかったことと、リアリティをもった内容(※大柴さんは米国在住)だったからだと思います。

また、この講演で最も象徴的だったことは、この講演をTwitter上で実況したり議論したりする人が、かなりいたことです。そのログはTwitterユーザーの第一人者(αTwitter-er)でブログ「マーケる?」のyteppeiさんがまとめてくれていますので、是非ご一読を。複数の人による実況や議論で、セミナーの内容がWeb上に自然と立ち上がっていく様子が分かると思います。

肝心の本の内容ですが、個人的にはまさに「リアリティ」にこそ、この本の価値はあると思いました。20072月から大柴さんがオバマに注目し、彼の動向を大統領になるまで追っていく形式なのですが、米国国内の様子が手に取るように具体的なので、とても分かりやすかったです。オバマ関連書籍は他にも良書が幾つか出ていますが、それらで言われていた理論等が、この大柴さんの本を読むことで、体に染み込むように改めて理解することができました。

さらに、タイトルにもあるYouTubeの関連動画を本の各所に散りばめて紹介しているのも特徴です。これらを見ながら読み進めていくことで、オバマ大統領選挙を“追体験”することができます(あとがきを担当された菊井健一さんもこの点をご指摘しています)。また既存のテレビを中心とした選挙活動との対比の意味でも上手な構成だと思いました。(ちなみに、「各ケーブルテレビは政党色を強く出す」という大柴さんの講演中の解説も印象に残りました。具体的には本を読んでいただければ分かるのですが、日本とかなり違う点です)

 

ご紹介は以上なのですが、ここで「プロサンプション活動のモチベーションに関連する話題」に戻りましょう。その話題は、大柴さんの講演の冒頭の米国のメディア環境を説明するパートで出てきました。これがこちらの資料リンクです

これは、「Social Technographics Ladder」というもので、ソーシャルメディアにおける人々の活動の度合いを6つのカテゴリーに分類したものです。ハシゴの段が高くなればなるほど、よりアクティブで難易度の高い活動を表しています。具体的には、「inactives(活動しない人)」→「Spectators(観客/傍観者)」→「Joiners(参加者)」→「Collectors(収集家)」→「Critics(評価者)」→「Creators(創造者)」という段階です。

※各カテゴリーの定義などは資料リンク先をご覧ください。

※尚、この資料リンクは『グランズウェル』(シャーリーン・リー、ジョシュ・バーノフ著、伊東奈美子訳、翔泳社)の原著のサイトとなります。この本で語られていることもプロサンプションと密接な関連があるので、今後どこかで触れてみたいと思っています。

そして、この6つのカテゴリーそれぞれのボリュームがどのように推移しているか、という調査結果が出ているのですが、「inactives(活動しない人)」以外の5カテゴリーがいずれも増えています。

※詳細はリンク先でどうぞ(重複アリなので各カテゴリーの合計は100%にはなりません)。

これは注目すべき事実です。まず、このような背景があったからこそ、オバマ流の選挙活動はうまく機能したと言えるでしょう(というか、そのような講演内容でした)。そして、これはプロサンプション活動が今後さらに活発になってくること(またそれをどのようにビジネスにリンクさせていくかが重要な課題となること)を示唆しています。

というわけで、次回のモチベーション構造は、この「ソーシャルメディアユーザーのカテゴリー」も意識しながら考察を進めていきます。(前回の記事から続く記事4、5本の内容は、本研究ブログの核心のひとつとなる予定で書き進めています)

カテゴリー: プロサンプション事例紹介 — 梅田 9:55 AM  コメント (829)

現代の「安心づくり」にもプロサンプションは活用されていく

こんにちは。大広の梅田です。

前回の続きとして、「『中央集権的な強制力を発揮する権威が存在しない』環境における、プロサンプション活動のモチベーションの背景となっている土壌/文化について」といったことを書こうと思っていますが、面白い情報を見つけたので、そちらをご紹介してみます。

それは、博報堂生活総合研究所の未来予測「生活動力2009」に出てくる「ソーシャル・リノベーション時代の企業に求められるC to B発想」という分析です。

ソーシャル・リノベーションの時代は、 「みんなで生産して、みんなで消費する」時代であり、供給者と受給者という従来の関係のバランスが変化し、従来の固定概念が変化していきます。このような時代に企業に求められるのは、単なる供給者を越えて、社会を修理していく生活者の協働者、パートナーになることです。産業界にも、生活者(Consumer)が投入する知恵・労力・私財などのリソースを、企業(Business)が組織化して新たな社会資本を生産する=C to B発想」への転換が求められます。企業がプロジェクトを起案し生活者が参加する、生活者の企画を企業がパトロネージュする、別々の生活運動を企業がつないでより大きな社会修理を図るなど、企業と生活者の新たな接点と絆が生まれます。

(博報堂生活総合研究所「生活動力2009より)

これ、まさにプロサンプションの概念ですよね。この分析では生活者自身の「安心づくり」のためのプロサンプションとして語られていますが、それ以外にも、「CtoB」というビジネス視点は成立するはずです。今後要注目だと思いますし、例えばここで語ってきたような「同人シリーズ」なんかが当てはまりそうです。

また、この「安心づくり」ですが、それ以外にも「プロサンプション活動の源泉となるモチベーション」は存在します。まさにその辺りについて、次回以降(おそらく次々回の予定)の内容と密接に関連してくると思います。

最後に、「パトロネージュ」というのも非常に面白い視点だと思います。そもそも「パトロン」は芸術活動を支援する意味合いが強い言葉ですが、生活者がつくる文化的コンテンツを企業がパトロンとなり応援し、自社の企業活動にも活用していく、といったことが(「安心づくり」領域以外においても)これから増えてくると予想します。

それでは次回、プロサンプション活動を起こす文化/土壌について、触れていきます。

カテゴリー: プロサンプション事例紹介 — 梅田 1:25 PM  コメント (2,587)

プロサンプションとコミュニケーションの接点(具体事例のご紹介2)

こんにちは。大広の梅田です。

09年のスタートが少し遅くなってしまいましたが、本年もよろしくお願い申し上げます。

不景気と騒がれる昨今ですが、「プロサンプションという消費者の(無償の)生産的活動を、企業活動の一環として関係性を取り結ぶ(ことで結果的に収益性を改善させる)」研究を続けていくことで、この閉塞的な状況を打破する1つのアプローチとして提示していきたいと考えております。

 

さて、昨年の続きで、「プロサンプションとコミュニケーションの接点」の具体的な事例をもう1つ挙げます。

サントリーが昨年5月に実施したブロガーイベント「ハイボールナイト」です。

3月にサントリーが開催した「シングルモルトウイスキーセミナー(白州蒸溜所)のブロガーイベント」1コーナー「すごいハイボール」の話題が、参加したブロガーの間で盛り上がり、そこを起点にブロガーの間でハイボール熱が高まっていきました。

それを背景に、“クチコミ・マーケティングのパイオニア”ONEDARI BOYS(企業に対して自分たちのブログで話題にしたい商品のサンプル送付を自主的に“オネダリ”する集団)が、サントリーに「ハイボールオフ会」をオネダリして、サントリー側がそれを快諾した。

・・・という事例です。ここでまとめた3つの観点に沿ってポイントを書いてみます。

まず、「プロサンプション活動のコンテクスト」ですが、これはもう、申し分ないですよね。ブロガー(生産消費者)の間で「ハイボール」に関する話題が盛り上がっており、しかも「オフ会を主催してみませんか?」というオファーまでもらった、という状態であり、「ハイボールについてもっと知りたい!広めたい!」というコンテクストは、関係性を取り結ぶ上でとても良好だと言えます。

そして、「発散的なプロサンプション活動を集約するVisionですが、今回の事例は、企業にとってはコンテクスト自体がかなり企業寄りに集約されている状態でしたので、「(オファーに応えて)オフ会を実施する(ことでブロガーと関係性を取り結ぼうとする姿勢を示す)」ということに尽きます。

最後に、「プロサンプション活動の元となるネタ等の提供」ですが、これもその「オフ会開催」に尽きます。この記事のトラックバックから参加者の感想など読むと、申し分のない情報や体験が提供されたようです。特に、「名札のリボンの色を顔出しOK/NGで選んでもらう」など、細かい配慮/おもてなしもされています。また、そもそも企業の情報を発信する公式ブログ「サントリートピックス」があること自体が、情報/体験の提供の起点となっており、このような施策をやりやすい体制になっている、と言えます。

以上、ポイントを書いてみましたが、詰まるところ、「ブロガーからの要請を快諾してスピーディーに実行に移した」ということが、最も大切であり、ブロガー(生産消費者)と関係性を上手に取り結ぼうとする企業姿勢が見えます。

さて、次回ですが、「伽藍とバザール」研究シリーズに戻ります。「リナックスがつくられる過程でどのような『コーディネート』が為されたのか?」「その中でどのように生産消費者の『モチベーション』を向上させていたのか?」などのポイントを、上から順に読んでいきながら、抜粋していきたいと思います。

カテゴリー: プロサンプション事例紹介 — 梅田 6:43 PM  コメント (777)

プロサンプションとコミュニケーションの接点(具体事例のご紹介1)

こんにちは。大広の梅田です。

今回は、「プロサンプションとコミュニケーションの接点」のひとつの区切りとして具体的な事例を紹介しますが、前回書いた、

・プロサンプション活動の「コンテクスト」を意識する。

・発散的なプロサンプション活動を集約するVisionを明示する。

・プロサンプション活動の元となる「ネタ等」を提供する。

というポイントを押さえていきます。

※事例紹介は今回に限らず、今後も随時ご紹介していきたいと思います。

まず、pixiv上でいくつか実施されたゲーム企業とのタイアップ事例が顕著な事例だと思います。その中のひとつである、pixivとスクウェア・エニックスのタイアップ企画「パーティーキャッスル キャラクターデザインコンテスト2008を取り上げてみます。

このタイアップ企画の内容ですが、「仮想空間の住人として写真/動画の作成やゲームのプレイができる新しいオンラインサービスに実際に登場するキャラクターデザインをpixivユーザーから募集する」というものです。

この企画において、前提となっているpixivユーザーの「コンテクスト」は、「自分の好きな絵を書いて交流する場」というものです。

それに対してこの企画の「Vision」は、「『スクウェア・エニックス』の仮想空間『パーティーキャッスル』に住むキャラクターを自由に描いてほしい」というものが相当すると考えられます。

ここで注目すべきは、Visionがまずコンテクストに沿っている、ということです。その上で、「スクウェア・エニックス」という企業ブランドや「パーティーキャッスル」という語感が、発散的なプロサンプション活動をある程度集約させる方向付けとして機能しているのではないでしょうか。

そして、提供した「ネタ等」ですが、まずは、「美術や魔法が盛んな大国『アーティスキュール』」「科学の民主国家『サイエンティックヘブン』」「混沌と自然の学園国家『カオスフィール』」という国の設定がそれに当たります。この与えられた情報を元に、pixivユーザーはデザインのイメージを膨らませます。また何より、「募集したキャラクターから選ばれた大賞については、ほぼそのままのデザインで仮想空間内に実装する」という「名誉」がポイントです。あるいは「承認」と呼んでも良いかも知れません(※この「承認」という概念は、どこかで深掘りする予定です)。

「スクウェア・エニックス」というファンに愛されている企業から認められる、ということがプロサンプション活動を行うユーザーのモチベーションになっていることは、まず間違いないと思います。

この事例全体として、企業自体がコンテンツをつくっているわけではなく、「コーディネート」しているだけで、実際の具体的なコンテンツ(キャラクターデザイン)はユーザーがつくっています。まさに顕著な事例と言えるでしょう。

ただ、この事例はコミュニケーションの側面もありますが、サービス自体を一緒につくる、という側面が強いです(し、サービスそのものがプロサンプション的でもあります)。

ですので、もうひとつ顕著な事例、しかも目的がコミュニケーションに焦点が当たっているものを、次回にご紹介します。

カテゴリー: プロサンプション事例紹介 — 梅田 10:51 AM  コメント (723)

【「伽藍とバザール」研究シリーズ】003…「伽藍とバザール」というタイトルの意味

こんにちは。大広の梅田です。

さて今回は、この論文の不思議なタイトル「伽藍とバザール」に込められている意味を紐解いていきます。

著者のレイモンドは、「伽藍」と「バザール」という言葉を、

一番だいじなソフト(OS や、Emacs みたいな本当に大規模なツール)は伽藍のように組み立てられなきゃダメで、一人のウィザードか魔術師の小集団が、まったく孤立して慎重に組み立てあげるべきもので、完成するまでベータ版も出さないようでなくちゃダメだと思っていた。

だからリーヌス・トーヴァルズの開発スタイル(中略)にはまったく驚かされた。静かで荘厳な伽藍づくりなんかない―― Linux コミュニティはむしろ、いろんな作業やアプローチが渦を巻く、でかい騒がしいバザールに似ているみたいだった

Eric S. Raymond 著 山形浩生 YAMAGATA Hiroo 「伽藍とバザール」より)

といった文脈で用いており、ざっくりと言えば、伽藍は「局所的で静かで荘厳で統制されるイメージ」、バザールは「至るところにある自由で活発な活動で形成されるイメージ」の象徴として使っています。

もう少し具体的な意味を探るために、それぞれWikipediaを引いてみると、

伽藍方式

選ばれた開発者だけのグループ内で開発が行われ、ある程度まとまった形になるまで外部に公開しない。開発の経過は基本的に部外者には見せない。

Wikipedia「伽藍方式」より)

バザール方式

特に、インターネット上での創造活動に有効な手法で、参加者を限定しないこと、参加者の独自性を尊重すること、階層的な組織ではなく個人が中心となったルールや命令系統の少ない方法で進められるのが特徴である。Linuxの場合は、最終的な取りまとめをするリーナス・トーバルズが交通整理をする協調的なコーディネータの役目をしている。

Wikipedia「バザール方式」より)

とあります。

さて、この正反対の開発スタンスについて、「プロサンプション研究としては」次のように捉えて考察を進めていきます。

【伽藍方式】:プロサンプション(消費者の自主的な生産)活動の入る余地がなく、またクローズドに開発を進めていく方式。

【バザール方式】:オープンソースを前提とし、マスコラボレーション的にプロサンプション活動を有効に取り入れつつ開発をまとめていく方式。

・・・このように捉えることで、伽藍方式とバザール方式を比較しながら、「プロサンプション活動を有効に取り入れるためにはどのように参加者をモチベートすれば良いのか?」を考察していきます。

※補足:(書いている自分でも)混同しやすいポイントなので整理しておきますが、「マスコラボレーション」はプロサンプション活動を前提としません。また勿論、「Web2.0≠プロサンプション」であり、Web2.0という環境に(既存ビジネスを代替するパワーを持つ)プロサンプション活動はよく馴染むが故に『Web2.0は儲からない』と言われている」という現状を如何に打破するか、がこの「プロサンプション研究ブログ」が目指すところです。

 

さてタイトルの意味が“プロサンプション研究的に”掴めたところで、次回は「前シリーズの【同人シリーズ】と今回の【「伽藍とバザール」研究シリーズ】とでは、プロサンプション活動として何が類似点で何が相違点なのか?」を整理しておきます。

(キーワードは上記Wikipediaで引用した「交通整理をする協調的なコーディネータ」という概念です)

カテゴリー: プロサンプション事例紹介 — 梅田 11:28 AM  コメント (728)

【「伽藍とバザール」研究シリーズ】002…本シリーズの概要(補足)

こんにちは。大広の梅田です。

「伽藍とバザール」論文から、モチベーション仮説に繋がるようなポイントを探し出していこうかと思ったのですが、事前に整理しておいた方が良いことが幾つかありましたので、今回はそれを補足します。

 

1点目は、「伽藍とバザール」という論文/翻訳文自体のスタンスですが、文章がWeb上に全て公開されています(論文自体がオープン、というわけですね)。「伽藍とバザール」←このリンクから訳文を読むことができますし、さらに原文へのリンクも張ってあります。今後、引用の際には、(Eric S. Raymond 著 山形浩生 YAMAGATA Hiroo 訳「伽藍とバザール」より)と記すことにします。

 

2点目は、この「伽藍とバザール」という論文の内容ですが、「モチベーション仮説」のみを考察するのでは勿体無く、「プロサンプションビジネスのスキームを構築するための有用な示唆」に満ちています。したがって、「モチベーション仮説」に関連する部分を優先して考察・仮説化していきますが、その他の有用な示唆も積極的に取り上げていき、また別途まとめることにします。

 

3点目は、この【「伽藍とバザール」研究シリーズ】の執筆スタンスですが、前回「抜粋・紹介しながら一般的な仮説を立てるべく考察して最後にまとめ上げる」と書きましたが、基本的には上から順番に読んでいき、抜粋・紹介していきます。ですので、当初は「モチベーション仮説」と「その他の有用な示唆」が混ざる形になるかも知れません。ですので、抜粋する際には何に関連したポイントか明記するようにしますし、区切りの良いところで、「モチベーション仮説」関連の要素を随時まとめていきたいと思います。

 

さて次回は、この不思議な論文のタイトル「伽藍とバザール」に込められている意味を紐解いていくことで、「プロサンプション」「オープンソース」「マスコラボレーション」がどのように絡んでいるかについて、またこれから扱う【「伽藍とバザール」研究シリーズ】と今まで扱ってきた【同人シリーズ】の違いについて、整理・考察してみたいと思います。

カテゴリー: プロサンプション事例紹介 — 梅田 1:58 PM  コメント (914)

【「伽藍とバザール」研究シリーズ】001…本シリーズの概要

こんにちは。大広の梅田です。

早速ですが、前回の予告通り、プロサンプション(生産消費)活動を行うモチベーションの維持・向上に必要な要素を探るべく、コンピュータのOSである「リナックス」がオープンソースで開発される過程を研究した論文「伽藍とバザール」について触れていきたいと思います。

特に焦点を当てる箇所ですが、この論文は「リナックスを開発するにあたり、『こういうポイントを押さえた』から、物事がこのように進んで上手くいったのだ」という形式で概ね書かれていますので、この「こういうポイント」に注目していきます。

この「ポイント」は全部で10個前後あると思いますので、それらをまずは抜粋・ご紹介しながら、「リナックス」に限ったことではなく「プロサンプション活動全般」としても当てはまるかどうか(一般化できるかどうか)の考察をしていきます。

本シリーズのゴールとしては、上記のような考察をまとめ上げることで、モチベーションに関する幾つかの仮説を立てたいと考えています。

 

では、次回からはいよいよ本論に入っていきます。

カテゴリー: プロサンプション事例紹介 — 梅田 11:00 AM  コメント (821)

【同人シリーズ】008…「コミケと出版業界の関係と今後の可能性」の事例紹介(後半)

こんにちは。大広の梅田です。

前回に続き、「2. プロ/アマ問題」(プロ側(生産者)の市場衰退とアマチュア側(生産消費者)のプレゼンス増大における、相対的な各種問題)について触れていきます。

 

まずは「プロ側」についてですが、「市場衰退」の理由として、まずは「嗜好の多様化」「メディアの多様化」が挙げられるかと思います。

(だからこそ、ひとつのコンテンツ(ブランド)を多様なメディアに展開できる「版権」というビジネスモデルは今後も基本的に重要であることは変わらないとは思います。ただし「版権」の捉え方/在り方そのものは激しい変化を必要とされるのではないか?と考えています。詳しくは、別記事で書く予定の分析パートにて。)

 

しかし、最も特徴的な「市場衰退」の理由として、「コンテンツの質の低下」という要因も挙げておく必要があると考えます。

以上のことは、たけくまブログ「マンガ界崩壊を止めるためには(5)」が詳しいです。

「市場衰退」

マンガ雑誌の売り上げは1995年をピークに下降の一途をたどっているのです(中略)。それまで右肩上がりの成長を続けていたマンガ界にとって、これはインパクトのあるデータだといえます。

(たけくまブログ「マンガ界崩壊を止めるためには(5)」より)

「コンテンツの質の低下」

出版界は、目先の利益を追求してヒットマンガの際限なき連載引き延ばしを図り、結果として自分の首を絞めたとしか思えません。

(同より)

 

さて、今回のエントリー記事の主眼は、上記の「プロ側」と表裏一体の関係にある「アマ側」です。

「アマチュア側(生産消費者)のプレゼンス増大」について、最近の話題としては「ニコニコ動画のMAD」がすぐに思い浮かびますよね。確かにそうではあり、「時間/体験の消費」を生んでいる点は、既存市場の競合となるでしょう。ただし、「カネ」は直接的には生んでいない(稼いでいない)ものです。その点では極めて「プロサンプション(生産消費活動)」らしい現象と言えます。

今回、議論の主な対象としたいのは、「カネ」を生んでいる「プロ同人」を取り巻く環境です。

まずは、こちらをご覧ください。

コミックマーケットと職業作家、商業誌の関係

コミックマーケットは、元々はアマチュア作家たちの為の同人誌即売会であった。その主旨は現在でも建前としては変わっていない。しかしアマチュア作家がコミックマーケットへの参加を続ける中で商業誌の編集部に見出されてプロデビューを果たしたり、職業漫画家となった者が個人でコミケットに参加して執筆誌を頒布したり、さらには商業誌での活動が無いながらも大部数の同人誌の発行と完売を為し制作費の回収はもとより自身とスタッフの生活費などまで稼ぎだす、すなわち同人作家を職業とする者が現れたりといった現象が規模が大きくなるに連れ一般化してきた。これらの要素によりアマチュアとプロとの境は年を追う度に曖昧なものとなって行き、この流れは商業漫画界全般にも波及している。

Wikipedia「コミックマーケット」より)

如何でしょうか。これほどまでに「プロ側(生産者)」と「アマ側(生産消費者)」が密接な関係にありつつも、法的には問題があるのが現状です。

ここでお断りしたいのは、この記事の趣旨は、「プロ同人の存在が問題だ」ということでは断じてありません。カネを生んでいること自体も問題ではありません。

問題なのは、「本来、明確に区別されるべき『生産者』と『生産消費者』が曖昧な見解の下で共棲している」ということです。

 

すでに何回か、このブログに登場しているこの資料の図2で説明します。(クリックして図2をご覧ください)

「生産」活動は、生産物を提供する代わりに金銭を受け取ります。

「生産消費」活動は、生産物で金銭を受け取る代わりに、自分たちの満足のためや消費側とのコミュニケーションを目的としています。

この状態で、「生産」と「生産消費」が、互いにWin-Winになる関係性を考えることが大切だと考えます。

(例えば、「生産」側には利益を、「生産消費」側には安定した活動環境を、それぞれもたらすような構造)

 

しかしながら、現状の「出版業界(生産)」と「コミケ(生産消費)」の関係性は、法的に曖昧なまま長年放置され、両者の境目が崩壊しています。

具体的に言えば、まず「生産消費」内で「生産」側と「消費」側とに分裂しており、その分裂した「生産(消費者)」側と本来の「生産(企業)」側とが区別しづらい(或いはくっついた)状態です。

例えば、「生産(企業)」側に属しながら(活動環境に不満を覚えるなどして)、「生産(消費者)」側にも軸足の片方を置いて活動するケース(=企業への創作物提供機会の損失)。また、「生産(消費者)」側ではあるが「生産(企業)」側のように利益を得ているケース(=企業には利益が入ってこない)。・・・いずれも、「生産(企業)」側としては“面白くない状態”であると推察されます。

ただ、その一方で、「生産(企業)」側にとっても、「生産(消費者)」は、将来の「生産(企業)」側の有力候補であったり、「消費」に対して一定のインパクト(「生産(消費者)」自体が消費者(ファン)でもあること、「生産(消費者)」の活動がプロモーション効果を生むこと等)を持っていたりするので、一概に否定することが出来ない状態でもあります。(ここは「1. 権利問題」で書いた事と通ずる点がありますよね)

 

以上、「2. プロ/アマ問題」をまとめます。

 

既存市場が、ヒットマンガへの過多な依存等の要因でコンテンツの質が低下、その他の理由も加わり、長期的(構造的)に減少傾向である一方で、アマチュア側の活動が存在感を増している。

プロ(企業)とアマ(消費者)双方の生産活動の境目が崩壊し、カネや創作物が必ずしも企業側に提供されない状態ではあるが、生産(消費者)の旺盛な活動に依存している側面もある。

そのため、大きな収益源としては稀に出るヒットマンガに頼らざるを得なく、悪循環に陥っている。

 

・・・といったところでしょうか。

さて次回は、「1. 権利問題」「2. プロ/アマ問題」を踏まえた上で、それらの状況を打破する視点を「分析・考察」するパートに入っていきます。

カテゴリー: プロサンプション事例紹介 — 梅田 12:05 PM  コメント (1,236)

【同人シリーズ】007…「コミケと出版業界の関係と今後の可能性」の事例紹介(前半)

こんにちは。大広の梅田です。

それでは早速、コミケにおける権利問題について触れていきます。

 

さて、そもそものことですが、みなさま疑問に思われているかも知れません。

「何故、コミケにおける二次創作は『黙認/容認』の状況なのか?」

と。つまり、例えばYouTubeやニコニコ動画と比べて何故コミケは「権利者削除」が少ないのか?ということです。

(事実、この冬に予定されている75回目のコミケの出店を分類する「コミックマーケット75ジャンルコード一覧」を見渡してみても、オリジナルに比べて二次創作が多そうなことが伺えます。)

この「黙認/容認」という状況は、一言で言えば「出版社と同人の曖昧で切り離せない関係」によるものだと考えます。

※前回の記事でも指摘しましたが、やはり「権利問題」と「プロ/アマ問題」は深い関係があります。

 

具体的には、

出版社やコンテンツ配給会社なども、同人誌即売会の有名作家をヘッドハンティングして質の高い作家を集めたり、新人賞などをとった作家の修行先としての役目を果たしている側面もあるため、黙認しているのが現状である。(中略)

二次創作の元となる作品を供給している側も、かつては自分が二次創作によって創作技術を磨いてきたという事実がある。中には、プロとなってからも同人誌等で堂々と二次創作を行っている例も多い。また、高いレベルの二次創作家がプロにスカウト、またはスポット的な仕事をすることがある。こういったことにより「消費のみのファン - 二次創作家 - プロ作家」の区分が流動的になっている。(中略)

他の先進国(特にアメリカ)と異なり、このように著作権侵害に当たるような行為を著作権者が「黙認」することによって、製作側・消費側ともに断続面のない厚い地層が形成されていることが、現在の日本における漫画・アニメ隆盛の原動力の一つとなっていると言え、既にほとんどの製作側にとっても不可分と言える。

Wikipedia「同人誌」より)

という情報に、両者の関係性は集約されていると思います。

※この辺りは、「2. プロ/アマ問題」で、もう少し詳しく触れる予定です。

このような関係性ですので、出版社側としては、

* 「お客様に弓を引く様な行為はできない」というジレンマ

* 具体的な対応を取る事により、各種の手続きなど様々な作業・手間が発生する

      o また手続きなどには費用・手数料が掛かるものもあり、費用対効果で見合わない

* 「同人誌はあくまでファン活動の一環」という認識が特に同人誌の制作者や購入者たちに根強く存在する為、摘発行為を行う事に対する同人ファン層の反応・反発などに対する懸念

* 良くも悪くも「同類」ゆえに、対応を取りにくい

Wikipedia「コミックマーケットが抱える問題」より)

といった理由で、対応をとりづらい状況のようです。上記にまとめられている理由は、まさに「「ワンフェスの仕組み」への考察」でまとめたポイント

「(ファンなどへの配慮を含んだ)一定のプロモーション効果がある」

「逐一の権利処理は膨大な手間が掛かる」

と、ほぼ同様ですよね。ただし、大きなポイントは、「良くも悪くも『同類』」という点で、ここがワンフェスとの大きな違いです。

さらに言うと、ワンフェスの「当日版権システム」に当たるような明確なルールがない分、コミケの方が状況はよりカオス、と考えられます。

事実、権利者側の対応はバラバラであり、「全面容認」から「全面規制」までの極端な幅の中で、各社の様々な対応のグラデーションが存在しています。

その中では各種のトラブルも起きており、CopyrightTroublesというまとめサイトが非常に詳しいのでご参照ください。

 

以上をまとめると、「コミケの権利問題」は、以下の2点に集約されます。

・先に見てきた「角川グループとMADの関係」や「ワンフェスの仕組み」といった「権利者と二次創作者の関係」において認められる課題(「プロモーション効果」と「権利処理の手間」のバランスをどう考えるか?)は、同様にある。

・「権利者と二次創作者の関係性の近さと曖昧さ」が、「権利者側の対応がバラバラ」で「明確なルールがない状態」を生んでいる。

さらに、ここから少し考察すると、

「自発」⇒「容認」⇒「公認」⇒「発展的関係」

のステップにおいて、両者の親密さから「容認」フェーズが長い間続き、身動きが取りづらい状態まで進んでしまっている、と言えるかも知れません。

 

さて次回は、焦点の「2. プロ/アマ問題」について触れていきます。

カテゴリー: プロサンプション事例紹介 — 梅田 6:31 PM  コメント (1,281)

【同人シリーズ】006…「コミケと出版業界の関係と今後の可能性」の事例紹介スタンス

こんにちは。大広の梅田です。

今回から「コミケ」(コミックマーケット)をテーマにしていきます。

 

・・・といっても、コミケに関しては、既に多種多様な意見がブログ上で発表されていますし、何よりWikipedia「コミックマーケット」(とそこからのリンク)の情報がとても詳しいので、本ブログにおける事例紹介は、あくまで「プロサンプション活動」に関連する要点をかいつまんだ編集で紹介していきます。

 

まず、「コミケとは?」ということですが、一言でいうと、「漫画、アニメ、ゲームなどを題材とした同人誌(オリジナル/二次創作問わず)の即売会(祭典)」といったところでしょうか。

ここでひとつ、コミケというイベントを考える上でのポイントを挙げると、

参加者の区分

コミックマーケットでは、来場者は全て「参加者」と呼ぶ。自らは同人誌の発行ないしは他の参加者達との交流等は行わず、目的のサークルが発行する頒布物を入手する為だけに訪れる来場者(いわゆる「買い専」)も含めてそう呼ぶ。これは参加者は対等であり、「お客様」は存在しないとの理念からである。

Wikipedia「コミックマーケット」より)

という点です。このスタンスは、コミケ(に関する問題)を考えていく上で、とても重要になります。

 

さて、コミケに関するプロサンプション活動の事例として、本ブログでは「大きな2つの問題点」を取り上げます。

1. 権利問題

2. プロ/アマ問題

です。

一般的には1.の「権利問題」の方が有名であり、また取り上げられやすいと感じていますが、梅田としては、2.の「プロ/アマ問題」の方が根が深く、また「権利問題」とも密接に関連する、と考えています。

また「プロ/アマ問題」とひとくちに表現していますが、この問題をより正確に表現するならば、「プロ側(生産者)の市場衰退とアマチュア側(生産消費者)のプレゼンス増大における、相対的な各種問題」ということになります。

 

それでは次回は、具体的に1.の「権利問題」からご紹介していきます。

カテゴリー: プロサンプション事例紹介 — 梅田 2:59 PM  コメント (2,177)